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【金澤寿和のPREMIUM ONE】3月20日〜3月26日 番組後記 名匠 トミー・リピューマ 堕つ!!

◉ 名匠 トミー・リピューマ 堕つ

 お彼岸に絡めてメモリアル特集をオンエア、という直前に、
またもや大物の訃報が飛び込んできた。
プログラム内で取り上げたアル・ジャロウをデビューに導き、
ジョージ・ベンソンやマイケル・フランクスらをプロデュース。
近年ではダイアナ・クラールを育て、
ポール・マッカートニーのスタンダード・アルバムを手掛けたりもした人である。

 いわゆる業界人なので、
一般的知名度は高いとはいえないが、
フュージョンやAOR好きで、
ちょっとミュージシャン事情に詳しい音楽ファンだったら、
決して避けては通れない。
ビートルズで言えば、それこそジョージ・マーティンに当たる人。

 亡くなったのは、ニューヨークの病院で現地時間13日。
享年80歳だった。
少し前から体調を崩していたらしい。
どうやら、5月に発売予定になっている
ダイアナ・クラールの新作『ターン・アップ・ザ・クワイエット』が、
リピューマ最後のプロデュース作になるようだ。
このアルバムはダイアナにとって、
約10年ぶりのジャズ・スタンダード作品になる。
つまり彼は最後の最後、
手塩に掛けて育てたダイアナを相手に、
最も彼らしい作品でキャリアを閉じたことになる。

 歩み的には、
60年代はA&Mでソフト・ロック~ポップス系の黄金時代を築き、
70年代に入って新興ブルー・サムのプロデューサーに就任。
デイヴ・メイスンやベン・シドラン、マーク=アーモンドらを輩出し、
70年代後半は大手ワーナーでヒット作を連発。
そこで世に送り出したのが、
ベンソン『ブリージン』やマイケル・フランクスなどだ。
その後再びA&M傘下で自分のレーベル:ホライズンを創設し、
シーウインド、ニール・ラーセン、Dr.ジョン、ブレンダ・ラッセルらと契約。
日本のアルファ・レコードがA&Mとディストリビューション契約を結んだ際には、
YMOの世界進出に貢献した。

 このホライズンが短命に終わると、一旦ワーナーへ復帰。
スティーヴン・ビショップ、ランディ・クロフォード、
イエロージャケッツ、マイケル・ラフ、ナタリー・コール、
エヴリシング・バット・ザ・ガールらを制作。
86年にはマイルス・デイヴィス『TUTU』に携わった。
その後、デイヴ・グルーシン&ラリー・ローゼンの後を継いで
ジャズ・フュージョン・レーベル:GRPを仕切り、
98~04年はヴァーヴ・ミュージック・グループのチェアマンに。
以降は同グループ会長に座った。

 このように多くのレーベルを渡り歩いたが、
多くのアーティストと枠を超えて長く付き合い、
流行り廃りとは無縁との関係性を築いている。
ジャンルを飛び越え、
自由な発想で
ハイ・クオリティかつエヴァーグリーンな音楽を紡いだ音楽人:トミー・リピューマ。
まさしく、ミスター・ソフィスティケイション。
どうぞ安らかに…。 


                                     (金澤 寿和)







【 3月20日〜3月26日まで放送分のPLAY LIST 】



M1 : Can I Touch You There / Leon Ware                                       【選曲 : 金澤】 
今週はちょうど彼岸ということで、最近惜しまれながら鬼籍に入ってしまった
アーティストたちの追悼〜メモリアル特集を。
まず最初は、名プロデューサー/シンガー・ソングライターとして知られる
リオン・ウェア。マーヴィン・ゲイの名盤『I WANT YOU』は、
元々リオンのソロ作として制作が始まったが、それを聴いたマーヴィンがいたく気に入り、
彼の作品として完成を見たことが有名だ。
作家としての代表曲は、マイケル・ジャクソン<I Wanna Be Where You Are>、
クインシー・ジョーンズ<If I Ever Lose This Heaven>など。
今回のご紹介は、デヴィッド・フォスターやTOTO勢の参加でAORファンにも
人気の82年作『LEON WARE(夜の恋人たち)』(通算5作目)から。2月23日に享年77歳で逝去。





M2 :   I Want You / Marvin Gaye                           【選曲 : 竹内】
1976年にリリースされたマーヴィン・ゲイのコンセプトアルバム、
LP『I Want You』のSide 1の1曲目を【レーザー・ヴァイナル・マスターサウンド】
レーザーターンテーブルで再生。リオン・ウェアが自身のソロアルバムとしてレコーディング中の本曲を、
モータウンの社長、ベリー・ゴーディーが当時中々アルバムづくりが進まなかったマーヴィンに聴かせ、
すぐにこれをマーヴィンが気に入り、アルバムを共同制作することに発展。
音楽的にはダンス、ディスコミュージックがテーマになったアルバムのトップを飾り、
メロウ気質なソウルナンバーがアルバムを通した基幹をなす曲となっている。
キャンプ・ローによるジャケットも本作を名盤たるものに後押ししている。
リオン・ウェア自身も同年モータウンから『Musical Massage』として本曲を発表した。





M3 : Da Doo Rendezvous / Valerie Carter                                          【選曲 : 金澤】
今月3日に心臓発作で急逝したヴァレリー・カーター(享年64歳)は、
ジェイムス・テイラーやジャクソン・ブラウンなど、西海岸のベテラン・ミュージシャンたちに愛された
歌姫だ。19歳の時、ジョン・リンド(フィフス・アヴェニュー・バンド)らとハウディ・ムーンを結成し、
ローウェル・ジョージのプロデュースでデビュー。高く評価されるも商業的に成功せず解散。
ローウェルの手引きでセッション・シンガーとして活動したあと、ローウェルやモーリス・ホワイトの
バックアップを得て76年にソロ・デビューした。メロウなこの曲は、
78年のソロ第2作『WILD CHILD』から。オリジナルはエリック・クラプトンのサポートなどで活躍する
英国人シンガー・ソングライター:アンディ・フェアウェザー・ロウ。





M4 : Love Needs A Hear / Jackson Browne                                 【選曲 : 竹内】
1977年にリリースされたジャクソン・ブラウン最大のヒット・アルバム、LP『Running On Empty』の
Side 2の2曲目を【レーザー・ヴァイナル・マスターサウンド】レーザーターンテーブルで再生。
本曲が収録された『Running On Empty』は、ステージ上のライブパフォーマンスを中心に
ホテルの部屋やツアーバスの中などロード・ツアーを舞台にした様々なシーンで録音されている。
通常ライブアルバムはベスト盤的な趣の収録構成が主だが、
本アルバムは全曲が新曲とカヴァー曲で構成されている。
本曲は、ジャクソン・ブラウン本人とローウェル・ジョージ、そしてヴァレリー・カーターとの共作。
西海岸のアーティストを中心にバックコーラースをしてきたヴァレリー。
ジャクソンともコーラスワークを分かち合ってきた仲。本曲の中には、ジャクソン、ローウェル、
そしてヴァレリーのそれぞれの個性、カラーが互いに支えあいながら見事に輝きあっている。





◉レコメンド・コーナー『REVIVE ONE』!
1枚のアナログレコードにスポットを当てて、レコメンダーの愛聴盤をご紹介するコーナー! 




《 金澤寿和の愛聴盤 》


M5 : We’re In This Love Together / Al Jarreau                   【選曲 : 金澤】
アルバム・リコメンド・コーナー:Revive Oneも、今週は追悼〜メモリアル特集。
先日のグラミー賞受賞式典の朝、12日に訃報が伝えられたのが、ジャズ、R&B、ポップなど
ジャンルを超えた7つのグラミーを獲得している名シンガー、アル・ジャロウだ。
その少し前に過労で倒れて入院し、そのままライヴ・ツアーからの引退を発表したばかり。
それでもレコーディングは続けるし、イベントなどに出演して歌うのだろうと思っていた。
が、引退宣言に追い打ちを掛けるような急死のニュースに、ただただ絶句。
今回はアル作品群でも一番人気のジェイ・グレイドン・プロデュース3部作から、
81年の『BREAKIN’ AWAY』をチョイス。まずは全米15位のヒットになった、
この幸せ感溢れる名曲をお届けしたい。






M6 : Easy / Al Jarreau                            【選曲 : 金澤】
引き続きアル・ジャロウの代表作『BREAKIN’ AWAY』から。彼の代表曲のひとつに、
チック・コリアのピアノ曲に歌詞をつけて歌った<Spain>があるが、
この<Easy>もその流れを汲むもの。こちらはアルやジェイ・グレイドンらが共作した
オリジナル曲ながら、スリリングな演奏に乗ってアルのヴォイス・パーカッションやスキャットが
躍動する好トラックになっている。“レインボー・ヴォイス” とか“歌う打楽器”と称されて、
何とも多大な影響力を発揮したアル。かのボビー・マクファーリンだって、
アルがいなければ生まれなかっただろう。
一世を風靡したヴォイパことヴォイス・パーカッションの元祖アル・ジャロウ、享年76歳。
Rest in Peace…







《 竹内孝幸の愛聴盤 》


M7 : We Are The World / USA for Africa                       【選曲 : 竹内】
1985年に発表リリースされた史上最大のチャリティープロジェクト、USA for Africaによる作品、45rpm(回転) 12インチシングル『We Are The World』を【レーザー・ヴァイナル・マスターサウンド】
レーザーターンテーブルで再生。
英国で生まれたプロジェクト「バンド・エイド」の成功に触発され 
ハリー・ベラフォンテの構想によってすすめられた“アフリカの飢餓と貧困層を解消する目的”を持った
キャンペーンソング。楽曲は、マイケル・ジャクソンとライオネル・リッチーの共作で、
プロデュースはクインシー・ジョーンズが担当。
世紀のレコーディングは、1985年1月28日の夜、アメリカン・ミュージック・アワード直後、
ハリウッドのA&Mスタジオに45人のアーティストが集結しはじまった。
ソロ・ボーカル録音は22人のアーティストで行い、翌日早朝4時に開始され、
午前8時頃すべてのレコーディングが終了したという。
この世紀のソロ・ボーカルの仲で、ウィリー・ネルソンとブルース・スプリングスティーンの間で
ブリッジ部分をつないだのがアル・ジャロウ。スティーヴィー・ワンダーがゲストとして招いた
エチオピア女性のスピーチに涙をしていた姿、スタジオで超豪華な即興が始まったハリー・ベラフォンテの
「バナナ・ボート・ソング」で掛け合い、音頭取りをしていた七色の声とその笑顔が
今も瞼に焼きついている。