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【金澤寿和のPREMIUM ONE】9月5日〜9月11日 番組後記  アナログ・レコード復活ブームの行方!

◉ アナログ・レコード復活ブームの行方

 大手CDショップとしてお馴染みのHMVが、
10月1日に、新たなアナログ・レコード・ショップ
「HMV record shop 新宿ALTA」をオープンさせる。
これは2014年8月に開店した渋谷店に続く、
2店目のアナログ・レコード専門店。
最初はかなり懐疑的な目で見られていたが、
こうして2号店が出せるくらい、アナログ市場が復調しているのは、
大変喜ばしいことだ。

 その勝因(?)を探れば、
世界中のアナログ・レコード・ショップが
年に一回同時開催している祭典、
レコード・ストア・デイに行き着く。
アナログ・レコードの魅力、音楽の楽しさを伝えるべく、
著名アーティストの貴重盤や秘蔵音源をレコード化し、
限定発売してきたのだ。
08年にスタートしたこのイベントは、
最初は熱心な音楽ファン、アナログ支持派に注目され、
今では裾野が大きく広がって、音楽好きの間に定着しつつある。
CDを買わないどころか、
配信やYouTubeでしか音楽を聴いていないデジタル世代に向けては、
スピーカー内蔵タイプの安価なアナログ・レコード・プレイヤーが複数登場。
徐々にリスニング環境も整ってきた。
音楽市場の占有率こそまだ低いものの、
右肩下がりの音楽業界にとっては一縷の光明でもある。

 ただ、今のアナログ・ブームには不安要素も。
若い世代には7インチ・シングルが人気だが、
これがどうも「音楽を聴く」ためではなく、
グッズ感覚で接しているらしいのだ。
もちろん自分でDJプレイを嗜むのであれば、7インチは扱いやすくて便利。
でも実際はプレイヤーを持っていないのにレコードを買っている人が少なくなく、
アナログ購入層の4〜5割は“持っているだけ”という統計もある。
3~4,000円する新品LP盤ではそうでもないだろうが、
7インチEPなら1,000円台。
グッズといてはお手頃価格かもしれないが、これでは早晩、
ブームは単なるブームとして泡と消えていくだろう。

 音楽を作り、それを伝えていく立場の者たちは、
アナログ復活ブームを如何にソフト・ランディングさせるか、
そこを真摯に見つめていかないとマズイことになる。



                         (金澤寿和)





【 9月5日〜9月11日まで放送分のPLAY LIST 】


M1 : 秋の気配 / オフコース                           【選曲 : 竹内】 
1978年5月5日のこどもの日にリリースされた、オフコース初のベスト・アルバム
『SELECTION 1973-78』、Side Bラストの7曲目から。もともとはアルバム『JUNKTION』の
先行シングル曲として、1977年8月5日に発表された。アルバム収録曲とシングルは同内容だが、
ベスト・アルバム『SELECTION 1973-78』に収録された本バージョンはテイク自体は
1977年5月23日から26日まで音響ハウスで録音されたものと同じだが、イントロとアウトロの
ストリングスのミックスが異なっている。小田和正と鈴木康博に加えてリズムセクションに
清水仁と大間ジローが参加している。季節感と恋人との関係を“秋”として表現する切ないナンバーだが、
当時からファンの間では一番人気のナンバーで初のベスト・アルバムでもトリを取っている。
本曲のシングル盤からグループ名のカナ表記が“オフ・コース”から“オフコース”に変更された。
オフコースとしての季節も、ちょうど「初秋」を迎えていた、そんな時代の名曲。




M2 : Love Takes Time / Orleans                                                             【選曲 : 金澤】
今週は、現在発売中のレコードコレクターズ誌9月号で、カナザワが深く関わったAORの特集記事に
掲載したアイテムから、ちょっぴりレアな音源をチョイス。
オーリアンズといえば、大ヒットした「Dance With Me」が有名だが、70年代後半に分裂。
中核だったジョン・ホールがグループを離れ、残ったラリー・ホッペン(2012年没)らが中心になって
編成を立て直した。そして発表したのが、79年作『FOREVER』。
その時の第1弾シングルがこの「Love Takes Time(友よ再び)」で、
爽快なメロディを武器に全米11位を記録した。後にベスト盤などに収録されたが、
オリジナル・アルバムは今も未CD化のまま。その後ホールが復帰し、現在も断続的に活動を続けている。




M3 : September Blue / Chris Rea                                                         【選曲 : 竹内】
1987年に発表されたクリス・レアの通算9作目に当たるアルバム『Dancing With Staranger』、
Side Bラストの6曲目から。1951年生まれの渋い歌声とギターを心象風景豊かに描く、
シンガーソングライター&ギターリストのクリス・レア。クリスの夏の定番曲が
「On The Beach」ならば、秋の入口定番曲は間違いなくこの曲「September Blue」。
シンプルなひき語りスタイルで展開する詩の内容は、極上のラブソング。
この心底ハートフルな英語の詩がストレートに入ってこないことがことさら悔しい。
毎年9月になるとこの歌が恋しくなり、大切な人を想う「祈りの詩」がクリスレアの渋くて優しい歌声で
心身に響いてくる。人生の初秋は、この歌のようにいつか必ず訪れる。
そして次の季節に向かって、誰かを唯一人の存在として終着駅まで連れて行きたくなる、
そんなパートナーソングの決定盤でもある。
 



M4 : This Is It / Jack Jones                                                        【選曲 : 金澤】
ジャック・ジョーンズは60年代に人気を博した王道ポップス/MOR(Middle Of the Road)系シンガー。
フランク・シナトラの後継者と目され、トニー・ベネットとも親交が深い。
そんなベテランも、AOR全盛期の80年にはとてもステキなAORアルバム『DON’T STOP NOW』を
発表している。そこに収められたこの曲は、マイケル・マクドナルドとケニー・ロギンズが共作で、
ケニーのソロ3作目『KEEP THE FIRE』に入っていたもの。
それをジャックは、映画のサントラ曲「タワーリング・インフェルノ 愛のテーマ」などのヒットを持つ
モウリーン・マクガヴァンとのデュエットで、華やかに披露した。

 


◉レコメンド・コーナー『REVIVE ONE』!
1枚のアナログレコードにスポットを当てて、レコメンダーの愛聴盤をご紹介するコーナー! 



《 竹内孝幸の愛聴盤 》

M5 : September Song / Willie Nelson                                                  【選曲 : 竹内】
1978年にリリースされたアルバム『Stardust』、Side B 1曲目から。
1933年米国テキサス州生まれの83歳のベテランシンガー、ウィリー・ネルソンがジャンルを超えて
アメリカ音楽の文化遺産として愛される歌たちを、自身のアルバムに綴り始めた頃の作品。
プロデュースは、ブッカー・T・ジョーンズ、スタックスレコードのハウスバンドである
ブッカー・T&ザ・MG'sのフロントマンだったその人である。
カントリー、ソウル、ロック、ジャズ、アメリカ音楽をすべて包み込むような存在が
ウィリー・ネルソンの音楽だ。9月といえば人生に例えると残された時間はそんなに長くない、
といえるそんな時期。残された貴重な日々をあなたと過ごして生きてゆきたいと、
そんなウィリーが誠実に歌う。1938年にミュージカル・ナンバーとして生まれ、
ポピュラーなスタンダードナンバーとして成熟した歌が「September Song」だ。




M6 : Stardust / Willie Nelson                                                                 【選曲 : 竹内】
1978年にリリースされたアルバム『Stardust』、Side B 1曲目から。
シンガーソングライターであるホーギー・カーマイケルが1927年に書いた、
メインストリームのスタンダードソング。星の数ほどの多くの「スターダスト」の名唱・名演が存在するが、
ウィリーのこれが最もアメリカらしい広くておおらかなオーガニックな音の世界が広がるトラックだ。
本作をきっかけにカントリー界から大きく羽ばたいたウィリーは、
1985年、ニール・ヤング、トム・ペティ、ジョン・メレンキャンプ、ジョン・フォガティ、
ボブディランらとともに、アメリカ農家のためのチャリティーイベント「ファーム・エイド」を展開し、
若き頃より抱くヒッピー思想と共に自然志向の音楽活動を83歳の今も現役ミュージシャンとして
続けている。本アルバムはリファレンス用のディスクとしてアナログ盤、デジタル盤ともに
オーディオファンから愛用されている高音質な作品だ。





《 金澤寿和の愛聴盤 》


M7 : Love Is The Key / Tommy Coomes                                 【選曲 : 金澤】
今週はREVIVE ONE のコーナーも、レコードコレクターズ誌の記事から。
このトミー・クームスは、CCM(Contemporary Christian Music)と呼ばれる
白人ゴスペル・シーンのシンガー・ソングライター。
このシーンは歌詞がジーザスのことを歌っているだけで、音楽面はポップス、ロック、ヘヴィ・メタ、
ラップと何でもごされ、という世界である。
特に80年頃はAORが流行っていたので、そういう音に乗せて神のことを歌うシンガーが多かった。
有名なところでは、エイミー・グラントがこのタイプ。ボブ・ディランも一時期、
スピリチュアルなアルバム制作に向かった時期がある。
そうしたCCM黎明期に活躍したフォーク・スタイルの3人組ラヴ・ソングの元メンバーが、
ここに紹介するクームス。81年作『LOVE IS THE KEY』はそのソロ・デビュー作に当たり、
このタイトル曲では、何処かクリス・レアに通じるメロウネスを湛えている。 





M8 : I Owe Everything To You / Tommy Coomes                                  【選曲 : 金澤】
同じくトミー・クームスのソロ・デビュー盤にして、
AOR系CCMの傑作『LOVE IS THE KEY』から。
ほのかにソウルっぽさを感じさせる ゆったりグルーヴに、
トミーのヒューマンな歌声が柔らかに乗る。
バックを務めているのは、ゴスペル界のクインシー・ジョーンズと呼ばれた
故アンドレ・クラウチ一派のミュージシャンたち。
彼らは自らコイノニアとしても活躍し、ブルース・ヒバードやロビー・デュークなど、
同系列の名盤の数々でバックを務めている。
クームスは現在も西海岸で、クワイアなどを率いて活躍中だ。