マガジン

月あかりの森

月あかりの森にひっそりと虫が鳴いています。
淡々と 淡々と 変わらないリズムで。
白い光に照らされて樹々は影絵のようなシルエットを見せています。
 
静かな夜の森に時折、他の野鳥とは全く違った特別な声が響き渡ります。
「夜の狩り人」「森の哲学者」・・といった異名を持つ彼らの声に耳を澄まします。
 
日本の原風景を思わせる里山の森。
日が暮れると、「ゴロッホ・ゴウゥホウ」とフクロウの声が聞こえてきます。
昼間はほとんど活動しないため、夜に聞こえる声でその存在に気づきます。
姿なく暗闇の中に響き渡る声は、様々な想像を掻き立てます。
 
奄美諸島や沖縄県の聖域とされている御嶽の森。
うっそうとした木々の間から「コホッ、コホッ」と、高く短い声が聞こえてきました。
奄美大島以南の南西諸島に生息する、リュウキュウコノハズクの声です。
先から秋にかけては雄と雌の鳴き交わしが聞かれ、雄が「コホーッ」と鳴くと、雌が「キュッ」と更に高い声で答えます。
まるで精霊のような不思議な声が、森のあちこちから聞こえます。
 
北海道の雪に覆われた山の奥に、「ホホゥ、ホウ・・」と低く深い声が響きます。
最後は極東地域に生息する、最大種シマフクロウの声です。
静まり返った極寒の森に響くその不思議な声は、まるで森のヌシの言葉のよう・・
まるで一羽の声のように聞こえますが、実は雌雄2羽で息を合わせて鳴き交わしています。
真っ暗な山間には、彼らの声だけが響いています。
 
冷たい光に照らされた夜の森で聞こえる神秘的な声。
寓話の世界への入口のようです。